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LTV向上の顧客対応とは?電話やメール、クレーム時の12ポイントを解説

「顧客対応力」が重要視される2つの理由

企業が継続的に成長するためには、他社との差別化が不可欠です。一方で、商品やサービスが成熟しきった現代社会においては、商品やサービスの内容で他社との差別化を図ることは難しくなっていますが、このような状況下でより重要度が増しているのが顧客対応力です。顧客対応力とは、顧客とのやり取りを通して顧客を満足させられるスキルを指します。顧客対応と一口に言っても接客や電話、メール、来客など様々な手段がありますが、どのような手段であっても顧客ニーズを的確に読み取り、満足度を高めるためのスキルが必要です。

LTVの向上

現在、顧客対応力が重要視されている理由のひとつにLTVの向上があります。LTVとはLife Time Valueの略で、日本語では顧客生涯価値と訳されます。ある顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益を表した指標で、1回の取引で得られる利益だけでなく、2回目以降の取引で得られる利益も含めて考えるのが特徴です。

現在、LTVはマーケティング戦略を進める上で重要な指標となっていますが、その背景には市場の飽和があります。成長市場では新規顧客を獲得するのは比較的容易で、企業は魅力的な商品やサービスを開発し、プロモーションを実施すれば利益を上げることが可能です。しかし、飽和しきった成熟市場では新規顧客を獲得するのは簡単なことではありません。そのため、成熟市場において事業を継続していくためには、顧客の定着化を図るとともに、既存顧客に継続的に商品やサービスを購入・利用してもらうことが重要となります。LTVは、既存顧客との関係性を測る指標となるため、マーケティング戦略における重要な指標となっています。

また、LTVを向上させるには既存顧客に商品やサービスを定期的に購入・利用してもらう必要がありますが、これを実現するためには顧客に不満や不便さを感じさせることなく自社商品やサービスを利用してもらわなければなりません。このような理由から顧客対応力が重要視されているのですが、近年の顧客対応ではカスタマーサクセスと呼ばれる考え方が一般的になってきています。カスタマーサポートと呼ばれる従来の顧客対応では、顧客からの問い合わせ対応が主眼に置かれていました。一方で、カスタマーサクセスは自社商品・サービスを使いこなすための情報やサポートを提供することを主体としています。カスタマーサクセスは直訳すれば顧客の成功という意味ですが、受け身の対応ではなく能動的にアクションしていくのがカスタマーサクセスの特徴です。顧客がどのように自社商品・サービスを利用しているのかといったデータを収集・分析した上で、顧客の成功体験を実現するためのサポートを積極的に行っていきます。例えば、商品やサービスの使い方に関する情報やサポートを提供していくことなどがカスタマーサクセスとなりますが、場合によってはコンサルタントのように顧客の課題解決に関わっていくこともあります。このようなカスタマーサクセスを導入すれば、顧客が自社商品やサービスを使いこなせるようになり、その結果、継続的な購入・利用につながるのです。

顧客価値は基本・期待・願望・予想外の4段階で構成

また、顧客対応力を高めることは顧客価値の向上にもつながります。顧客価値とは、企業が提供する商品やサービスに対して顧客が認めている価値のことです。商品やサービスを適正に売るためには顧客価値への理解が不可欠となりますが、ドイツの実業家であるカール・アルブレヒトによると顧客価値は基本・期待・願望・予想外の4段階で構成されています。

基本価値

基本価値とは、取引に不可欠な要因で、顧客は提供されて当然と考えている価値のことです。例えば、飲食物であれば摂取しても人体に害がないこと、家電製品であれば説明書に記載された通りの機能や性能であることが基本価値となります。提供しても顧客満足度の向上にはつながりませんが、提供できなかった場合は高い確率でクレームにつながるでしょう。

期待価値

期待価値とは、顧客が取引で期待する価値要因です。ファストフードであれば、安い・早い・値段相応の味やボリュームが期待価値に該当します。提供されない場合、クレームにはつながらないものの不満を抱かれる可能性が高く、顧客離れにつながります。

願望価値

願望価値とは、顧客にとって期待はしていないが提供されれば高く評価する価値要因です。ファストフードの場合はヘルシーメニューの提供などが挙げられますが、願望価値は提供できなかったとしても顧客の不満にはつながりませんが、提供できれば顧客満足度の向上が期待できます。

予想外価値

予想外価値とは、顧客の期待や予想を上回るときに生まれる価値要因です。例えば、飲食店であれば顧客の誕生日にサプライズでプレゼントを用意するといったことが予想外価値となります。顧客からすれば予想外のことなので、提供できなかったとしても取引継続に影響を及ぼしませんが、提供できれば顧客に喜びや感動を与えることができます。

これら4段階の顧客価値のうち、基本価値と期待価値は顧客が企業との取引を通して当然受けられるものと信じているレベルです。そのため、基本価値と期待価値を提供することは、市場での活動を維持するための必要最低限の条件と言えます。市場での競争優位性を確保するためには、願望価値と予想外価値を提供することが求められますが、顧客離れを防ぐためには最低でも願望価値の提供が必要です。理想を言えば、予想外価値を提供してより多くの商品やサービスを購入してもらうとともに、新規顧客を紹介してもらうことですが、自社商品・サービスを基本価値・期待価値を満たすものから、願望価値・予想外価値を提供できるものに引きあげるための要素のひとつが顧客対応力となります。顧客への対応が良いと自社のファンになってくれたり、新たな顧客獲得につながる営業マンになってくれたりしますが、逆に顧客への対応が悪ければリピート率の低下につながります。場合によってはクレームにつながる恐れがありますが、悪い口コミが広まる可能性も否定できません。インターネットが普及した現代社会において口コミは大きな影響力を持っているため、顧客対応力を高めておくことは非常に重要と言えるでしょう。

 

電話での顧客対応5つのポイント

顧客対応と一口に言ってもその手段には様々な種類がありますが、電話はインターネットが普及した現代社会においても非常に重要な顧客対応手段であり続けています。また、電話での顧客対応で意識すべきポイントは多岐にわたりますが、ここでは基本となる5つのポイントを解説していきます。

1.3コール以内に電話を取ること

1つ目のポイントは、3コール以内に電話を取ることです。一般的なビジネスマナーでは、電話は3コール以内で取るべきだとされています。4コール以上かかると顧客は待たされていると感じて不満を抱く恐れがあるため、電話がかかってきたときは可能な限り3コール以内で取るようにしましょう。万が一、4コール以上かかってしまった場合は、そのまま会話を進めずに最初に「大変お待たせいたしました」という一言を必ず添えてから話を進めることが大切です。

2.ゆっくりと明るく話すこと

2つ目のポイントは、ゆっくりと明るく話すことです。電話は互いの顔が見えないツールなので、普段通りに話しているつもりでも相手に悪い印象を与えてしまうことがあります。そのため、普段よりも明るくハキハキと話すことを心がける必要がありますが、たとえ相手に顔が見えないとしても笑顔で話すと、自然と声も明るい雰囲気になります。また、早口で話してしまうと相手が聞き取りにくくなるので、意識的にゆっくりと話すことも大切です。電話対応では自分の話し方が相手にどのような印象を与えるのかを考えることが重要となりますが、自分の話し方が適切かどうか分からない場合は実際の電話対応を録音しておいて、後で聞き直してみると良いでしょう。

3.曖昧な表現を使わないこと

3つ目のポイントは、曖昧な表現を使わないことです。言葉でしか説明できない電話は、相手に誤解を与えやすいというデメリットがあります。曖昧な表現をしてしまうと、互いの認識にスレが生じて後々のクレームにつながる恐れもあります。したがって、電話で話す際は極力曖昧な表現は避けて、誰が聞いても解釈が変わらない表現を選択することが重要です。特に、時間の感覚は人によって大きく異なるので、時間の目安を伝えるときは具体的な日時を明確に示す必要があります。例えば、「朝一番に」という表現ではなく「午前何時に」、「後ほどご連絡します」という表現は「何分後に」という表現に変えると誤解が生じるのを防ぐことが可能となります。

4.相手よりも先に電話を切らないこと

4つ目のポイントは、相手よりも先に電話を切らないことです。話が終わったからと言って、顧客よりも先に電話を切ることは失礼にあたります。顧客よりも先に受話器を置いてしまうと、どれだけ言葉遣いや話し方に注意を払っていても最終的な印象は悪いものとなってしまいます。顧客が電話を切ったことを確認してから受話器を置くのがビジネスマナーとなるので、電話対応の際は顧客が電話を切るまで気を抜かないようにしましょう。

5.肯定的な表現を選択

最後のポイントは、肯定的な表現を選択することです。誰でも自分が話したことを否定されるのは気持ちが良いものではないため、電話に限らず顧客対応の際は可能な限り肯定的な表現を選択することが大切です。否定的な話し方をすると相手の心を閉ざしてしまい、その後の会話が上手く進まない可能性が高まりますが、クッション話法を駆使すれば肯定的な話し方が可能となります。クッション話法とは、相手の意見を肯定した上で自分の意見を伝えるテクニックで、ノーバット法やイエスバット法、イエスアンド法といった手法があります。クッション話法は、顧客との電話対応だけでなく様々なビジネスシーンで活用できるテクニックなので、相手との関係性や状況などに応じて適切なテクニックを使っていきましょう。

ノーバット法

ノーバット法とは、相手の言葉を一度退けた後、すぐに代案を出す方法です。例えば、担当者が不在だったときに単に「申し訳ございませんが、ただいま外出中です」と言うのではなく、「申し訳ございません。ただいま外出しておりますが、お急ぎでしたら帰り次第こちらからご連絡いたしましょうか」と言うのがノーバット法となります。担当者が不在であるという相手の意にそぐわない内容を伝えた直後に、こちらから連絡するというプラスの提案を行うことで、相手の印象が下がるのを防ぐことが可能です。

イエスバット法

イエスバット法とは、相手の言ったことを肯定した上でこちらの要望を伝えるテクニックです。例えば、「お客様のおっしゃる通りです。しかしこちらでは対応しかねます」「確かに他社の商品よりも価格は高いですね。しかしながら自社の商品にはこのような機能が備わっています」といった話し方がイエスバット法となります。いきなりこちらの意見を伝えるのではなく、最初に相手の意見を肯定的に受け入れることで、こちらの意見を通しやすくなります。ただし、イエスバット法は相手も続けてイエスバット法を使う流れになるケースもあるので注意が必要です。

イエスアンド法

イエスアンド法とは、イエスバット法とは異なり、否定的な接続詞を使わずに自分の意見を伝えるテクニックです。例えば、「お客様のおっしゃる通り、他社商品よりも高いと感じられるかもしれません。実はこの価格には理由がありまして、」といった話し方がイエスアンド法となります。「しかし」といった否定的な接続詞を使わずに、「実は」「それでしたら」といったような肯定的な接続詞を使うことで、相手に柔らかい印象を与えることが可能です。

以上が顧客との電話対応で意識すべき5つのポイントとなりますが、電話対応のやり方は属人化が置きやすい傾向があります。顧客対応の属人化が起こると、新入社員などの経験が浅い人とベテランとで対応品質に差が生じてしまい、経験が浅い人はクレームを受けやすくなってしまう恐れがあります。このような事態を予防したいという場合は、マニュアルの作成を検討しましょう。電話対応のマニュアルを作成しておけば、電話対応の品質を一定水準以上に引き上げられるので、経験が浅い新入社員などでもクレームを受けにくくなります。加えて、従業員の教育コストも削減できるので、業務の効率化にもつながりますが、マニュアルを作成する際はベテラン社員の会話を録音したり、クレームにつながった事例を集めたりすると良いでしょう。

 

メールでの顧客対応3つのポイント

メールは、顧客対応の手段として電話とともに使われることが多いツールですが、メールでの顧客対応は家族や友人などとのメールとは異なり、様々なポイントを押さえておく必要があります。

迅速な対応を心がけること

1つ目のポイントは、迅速な対応を心がけることです。メールは、電話とは異なり相手の都合を気にせずに送信・返信できる便利なツールではありますが、顧客から届いたメールには可能な限り早めに返信することが大切です。メールの返信業務は、他の業務が忙しかったり、対応件数が多かったりすると遅れがちになりますが、返信対応が遅れるとクレームにつながる恐れがあります。逆に、返信が早ければ早いほど顧客に良い印象を与えることができますが、一般的には1時間以内に返信すると対応が早いと認識されるので、可能な限り1時間以内の返信を心がけましょう。すぐに返信するのが難しい場合でも、一般的に24時間以内に返信するのがビジネスマナーとされていますが、24時間以内の返信が難しい場合でも内容を確認したこと、改めて連絡することを伝えておくことが大切です。

また、問い合わせメールへの一次対応としては、自動返信メールを活用するのもおすすめです。問い合わせメールを送った顧客は、返信が届くまで「メールは本当に届いたのか」「内容は確認されたのか」といった不安を抱くものです。送信後にすみやかな返信が無い場合、顧客は確認のためのメールを新たに送信したり、メールとは異なる方法で問い合わせを行ったりすることもあります。すみやかな返信を行わないと問い合わせ業務の負担が増えてしまう可能性がありますが、自動返信メールで問い合わせを受け取った旨を伝えれば、顧客に安心感を与えられるとともに問い合わせ業務の負担軽減にもつながります。

なお、迅速なメール返信を実現するためには、返信内容のテンプレート化が欠かせません。テンプレートを作成しておけば、メールを打ち込む手間が削減できるとともに、メール品質の均一化にもつながります。ただし、返信メールのテンプレート化を進めすぎると、顧客に機械的な返信という印象を与えてしまう恐れがあります。顧客の中には対応に不満を抱えても、企業にクレームを入れることなくフェードアウトしてしまうサイレントカスタマーも多いため、テンプレートを作成する際は機械的な返信にならないように注意しましょう。

読みやすさを意識すること

2つ目のポイントは、読みやすさを意識することです。顧客とのメール対応では、誤字・脱字・文法誤り・文字化けなどを排除することはもちろん、内容をシンプルにすることが求められます。情報を詰め込み過ぎたメールは読みにくくなり、顧客に無駄な時間を使わせてしまうことになります。そのため、顧客とのメール対応では要点を押さえて、可能な限り簡潔に内容をまとめることが重要です。また、専門用語を使うと顧客に分かりにくいという印象を持たれてしまう可能性があるので、専門用語は顧客の理解度に合わせて使うかどうか判断しましょう。一般的でなかったり読み方が難しかったりする漢字も同様で、読みにくいと思われる漢字はひらがなで表記することが分かりやすいメールを書くコツです。
加えて、レイアウトを意識することも大切です。宛名や名乗りの後、段落ごとに1行空白行を差し込んだり、20~30文字ごとに適宜改行を入れたりすると読みやすいメールになります。一文が長くなってしまう場合は、読点など文章の区切りとなる部分で改行するのがおすすめです。

なお、顧客からの問い合わせメールへの返信は、現在進行形のやり取りであることが一目で分かるように、件名の「Re:」は削除しないのが基本です。何度もやり取りを重ねる場合は「Re:」の表記が多くなって件名が読めなくなってしまいますが、このような場合は「Re:」を一つにまとめたり、「Re5:」といったように返信回数を記載したりすると良いでしょう。

また、問い合わせメールに返信する際は、引用符の「>」を上手く活用しましょう。引用符を用いて相手の文章を引用しながらメールを書くと、どの質問に対する回答なのかが明確になるとともに、内容をシンプルにまとめることが可能です。ただし、メール内容の全てを引用すると相手に余計な負担をかけてしまうので、必要な部分のみを抜粋して引用しましょう。

社内で誰がどこまで対応したのかを共有しておくこと

3つ目のポイントは、社内で誰がどこまで対応したのかを共有しておくことです。複数人の担当者が1人の顧客に対応するケースは少なくありませんが、このような場合に互いの情報を把握していないと、担当者の不在時に顧客を待たせてしまう可能性があります。加えて、複数担当者で1人の顧客に対応する場合、対応漏れや返信の重複といったミスも起こりがちになります。そのため、どの担当者がいつでも対応できるように、誰がどこまで対応したのか、どのような対応を行ったのかを明確にした上で、その情報を社内でしっかりと共有しておくことが大切です。

また、複数人で1人の顧客を担当する場合、担当者間で対応品質にバラつきが生じる可能性があります。ある程度のバラつきはやむを得ないものの、回答内容や文面のトーンに大きな差があるのは問題で、顧客に不信感を抱かせる要因となります。したがって、複数人で1人の顧客に対応するケースが多い場合は、マニュアル作成などを通して社内や部署内で対応品質の均一化を図るようにしましょう。各担当者がそのまま返信するのではなく、上司などの第三者に承認を得るなどのプロセスを加えるのも効果的です。

なお、複数人で1人の顧客に対応するケースが多い場合は、メール共有システムの導入も検討しましょう。メール共有システムにはメールの送受信機能だけでなく、現在対応中の案件に対する進捗の管理、過去にやり取りしたメールの管理、テンプレートの管理といった機能も備わっています。メール共有システムを導入すれば、複数人で顧客対応する際のミスが軽減できるとともに、情報共有もスムーズに行うことが可能となります。現在は、様々なメール共有システムが存在しているので、自社に合ったシステムを導入してスムーズな対応ができる体制を整えましょう。

 

クレーム対応における「グッドマンの法則」とは

顧客対応力の中でもクレームへの対応力は非常に重要で、クレームを受けたときの対応の仕方によって顧客の印象度は大きく変わってきます。一般的にクレームなネガティブなイメージがありますが、対応が適切かつ迅速であれば自社のファンになってくれる可能性もあります。クレーム対応のやり方に正解はありませんが、基本的にはグッドマンの法則に沿うことが大切です。

グッドマンの法則とは

グッドマンの法則とは、クレーム処理と再購入決定率の間に相関関係があることが示された法則で、1970~1980年代にアメリカで実施された消費者苦情処理に関する調査が基になっています。グッドマンの法則という名称は、この調査を実施したジョン・グッドマン氏の名前に由来しています。この調査データを基に法則性を発見したのは、アナウンサーとして活躍し、晩年は白鴎大学経済学部の教授も務めた佐藤知恭氏で、グッドマンの法則という名称も佐藤氏によって付けられました。グッドマンの法則は顧客心理と非常に深い関係性があることから、不変の法則としてマーケティング業界において重要な役割を果たしています。

第一法則

また、グッドマンの法則は第一から第三の3つの法則で成り立っています。第一法則は、「企業に不満を伝えてくる顧客のうち、その対応に満足した顧客の再購入決定率は不満を伝えなかった顧客よりも高くなる」というものです。この第一法則は、企業にとってクレームの数は大きな問題ではなく、クレームに対していかに適切な対応ができるかが重要であることを意味しています。実際の調査によると、何らかの不満を感じて企業にクレームを入れたものの、その対応に満足した場合の再購入決定率は約82%でした。これに対し、不満を感じたもののクレームを入れなかった顧客の再購入決定率は僅か9%でした。つまり、不満を企業の直接伝えない顧客のほとんどが競合他社に乗り換えるということです。日本では、1990年代からコールセンターやお客様相談窓口を設置する企業が増えましたが、その背景にはグッドマンの第一法則があるとされています。

第二法則

第二法則は、「クレーム対応に満足した顧客の口コミと比べて、クレーム対応に満足しなかった顧客の口コミは2倍の効果がある」というものです。この法則は、悪い口コミは拡散力が強いことを意味していますが、実際の調査によれば悪い口コミを20人以上に伝える方は全体の12%もいることが分かっています。だたし、この結果は1970~1980年代に行われた調査によって得られたものです。1970~1980年代ですら悪い口コミが拡散しやすいということは、インターネットが普及した現代社会において悪い口コミはより多くの人に急速に広まっていくと考えられます。現代社会において、インターネット上の口コミは新たな商品やサービスの購入に大きな影響を与えるとされているため、この第二法則は現代社会において特に軽視できない法則と言えるでしょう。

第三法則

第三法則は、「顧客に価値がある情報の提供は、企業と顧客との間に信頼関係を構築させ、好意的な口コミの普及や市場拡大に貢献する」というものです。この法則における価値がある情報とは、企業にとってプラスになる情報もマイナスになる情報も含まれます。第三法則は、自社の利益向上のためには公開しない方が賢明だと思われるような情報であっても、顧客が価値を感じる情報であればしっかりと伝えた方が自社への信頼度が高まり、最終的に自社に利益をもたらすことを意味しています。そのため、企業は定期的に真摯な情報提供を行い、顧客との信頼関係を構築していくことが重要と言えるでしょう。

 

サイレントカスタマー

以上がグッドマンの法則の概要となりますが、顧客のクレーム対応を考える際は不満を抱えていてもクレームを入れないサイレントカスタマーにも注意を払う必要があります。サイレントカスタマーは、商品やサービスに不満を感じた顧客の9割以上を占めるとされていますが、サイレントカスタマーのほとんどは不満を感じた商品やサービスを利用することは二度とありません。企業としては何が不満だったのかが一切把握できないまま、顧客を失うことになります。また、グッドマンの第二法則にもあるように、ネガティブな口コミは拡散力が強いという特徴があります。商品やサービスの購入を検討する際に口コミを参考にする方は非常に多く存在しますが、サイレントカスタマーを放置することは新規顧客獲得の障害にもなるということも理解しておきましょう。

加えて、市場での活動を維持するためには新規顧客の獲得が非常に重要な要素ですが、新規顧客獲得に要するコストは既存顧客の維持にかかるコストの5倍ほどかかるとされています。この法則は「1:5の法則」と呼ばれていますが、新規顧客獲得よりも既存顧客維持を重視した戦略を実施する方がコストパフォーマンスが高くなります。この法則からもサイレントカスタマーを放置しないことが重要であることが分かるかと思いますが、サイレントカスタマーを減らすためには手軽にクレームを入れられる環境を整えることが大切です。クレーム対応は企業にとって大きな負担となりますが、クレームを入れることは顧客にも大きな負担であり、手軽に不満を申し立てられる環境がないとクレームを入れるハードルはさらに高まってしまいます。そのため、企業は顧客からのクレームを恐れることなく、顧客の不満を受け止めるための問い合わせ窓口を設置した上で、商品やサービスの情報を併せて問い合わせ窓口の存在を発信することが大切です。

また、グッドマンの法則にもあるように、クレームへの対応の仕方によってその後の顧客の行動は大きく変わります。対応が悪ければネガティブな口コミが普及して新規顧客の獲得が困難になりますが、対応に満足してもれえればリピーターになってくれる可能性が高まります。場合によっては新規顧客獲得につながる宣伝を行ってくれる可能性もあるので、問い合わせ窓口設置の際はオペレーターの教育も徹底することが重要です。

基本的な応対マナーはもちろん、自社商品やサービスの情報、トラブル発生時への対応方法など幅広い知識と柔軟な対応力を持った人材を育成していくことが重要です。

 

クレーム時の顧客対応4つのポイント

グッドマンの法則からも分かるように、企業にとってクレームを受けること自体は大きな問題ではありません。寄せられたクレームに如何に対応するのかが重要となりますが、ここからはクレームが寄せられた際の顧客対応で押さえておきたい4つのポイントを解説していきます。

相手の立場になって話を聞くこと

1つ目のポイントは、相手の立場になって話を聞くことです。クレーム対応では、不快な思いをさせたことに対する謝罪が必要ですが、単に謝罪を繰り返すだけでは顧客は満足してくれません。クレームを寄せる際の顧客は不満に対して非常に敏感になっており、対応の仕方を間違えると火に油を注ぐ結果になる可能性もあります。そのため、クレーム対応ではまず相手の立場に立って話を聞くことが重要です。話の内容だけでなく、相手の感情に共感することで不満や怒りは徐々に静まっていくので、まずは顧客に気が済むまで不満を話してもらうことを意識しましょう。また、対面でのやり取りであれば「うなずき」などのアクションで聞く姿勢を見せることができますが、電話対応では姿が見えないので適切なタイミングで適切な相づちを打つことが大切です。「なるほど」「よくわかります」「そうなのですね」「ごもっともです」といった相づちを適切に使用すれば、単なるお詫びに留まらず、顧客に自身の言っていることが理解されているという感情を持たせることが可能となり、信頼関係の構築につながります。

加えて、クッション言葉を上手く活用することも、顧客の話を聞く上で非常に重要です。クッション言葉とは、相手に不快感を与える恐れがある内容を柔らかく伝えるために前置きとして添える言葉を指します。例えば、「恐れ入りますが」「恐縮ですが」「お手数をおかけしますが」「もし可能であれば」といった言葉がクッション言葉に該当します。クレーム対応では、対応者の意図に反して顧客が不快な思いをするケースが少なくないので、クッション言葉を上手く活用して顧客の感情に寄り添っていることを印象づけることが大切です。

事実確認を行って何が問題なのかを把握すること

2つ目のポイントは、事実確認を行って何が問題なのかを把握することです。顧客の話をよく聞いた後は、クレームの詳細を確認しましょう。「いつ、どこで、どのようなトラブルが起こったのか」「誰に対して不満を持っているのか」「自社に対して何をしてほしいのか」といった点を把握することで、スムーズに問題解決につながる可能性があります。そのため、クレームを聞く際はどんな些細なことでも記録に残しておくことが重要で、正確な記録を取っておけるかが迅速かつ適切な対応につながるカギとなります。

また、クレームの詳細を確認するためには質問が不可欠ですが、質問の仕方によっては相手に不快な思いをさせたり、上手く回答が引き出せなかったりする恐れがあるので注意が必要です。質問の仕方には様々な方法がありますが、代表的な方法にオープン質問とクローズド質問があります。オープン質問は、相手に自由に話をしてもらう方法で、相手にストレスを感じさせずに本音を引き出しやすいというメリットがあります。一方で、話が本題からそれやすく、目的の情報が得られるまでに時間がかかるというデメリットがあるため、対応者には会話をコントロールする能力が必要です。クローズド質問は、YES・NOなど相手が一言で答えられるように質問する手法です。対応者が話の主導権を握るので、短時間で目的の情報が得られるというメリットがありますが、顧客の本音が引き出しにくいというデメリットがあります。一般的にオープン質問は口数が多い方、クローズド質問は口数が少ない方に適していますが、これら2種類の質問方法を適切に使い分けることで事実確認をスムーズに行えるようになります。

解決策や再発防止策を伝えること

3つ目のポイントは、解決策や再発防止策を伝えることです。顧客の要望を聞き出したら、対応策を検討した上で可能な限り早く解決策や再発防止策を提示しましょう。解決策や再発防止策を提示する際は、一方的な提案にならないように意識することが大切で、あくまでも顧客の立場に立って話を進めることが大切です。なお、自社に非があった場合は最大限の誠意を見える必要がありますが、過度な対応は行わないようにしましょう。例えば、深くお詫びをした上で新しい商品に取り替えるなどの対応が必要ですが、社会的な常識を大幅に超えた対応はすべきではありません。

また、自社に非がない場合は顧客の要望を断ることになりますが、お断りは二重クレームにつながりやすいので注意が必要です。お断りの際は、専門用語や業界用語を使わずに誰にでも分かりやすい言葉を選び、顧客の気持ちに寄り添って粘り強く説得することが重要となります。一方で、「会社の規則なので」「法令で決まっているので」といった言葉や、「お客様の使い方が誤っていたのではないでしょうか」といった自社の弁護は禁句です。これらの禁句は頭ではわかっていても、顧客とのやり取りの中で慌ててしまい、うっかり使ってしまうケースは少なくないので注意しましょう。なお、理不尽な要求をしてくるなど対応に困るクレーム客とのやり取りは、弁護士に交渉を依頼するのが効果的です。弁護士に依頼すれば、対等・公平な関係で交渉できるとともに、理不尽な要求を法的な根拠を示した上で断れるといったメリットがあります。

お詫びと感謝の気持ちを伝えること

最後のポイントは、お詫びと感謝の気持ちを伝えることです。クレーム対応は解決策や再発防止策を提示して終わりではなく、迷惑をかけたことに対するお詫びの気持ちと、クレームを寄せてくれたことへの感謝を伝えましょう。顧客がクレームを申し出たということは、自社への信頼度が低下していることなので、最後に誠心誠意謝罪の気持ちを見せて信頼回復に努めることが大切です。また、クレーム内容が商品やサービス、業務の改善につながる場合は不満を寄せてくれたことに対する感謝も伝えましょう。多くの顧客はクレームを入れることに後ろめたさを感じているので、単なる謝罪だけでなく感謝を述べることで、顧客は自分の行動が正当化されたと感じて安心してくれます。お詫びと感謝を上手く伝えられれば、クレーム対応全体の満足度が高まり、クレームが起こる前よりも自社に対して良い印象を持ってもらえる可能性があります。

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